第3章

ゴキブリの生態学

ゴキブリは、非常に原始的な昆虫です。かれらの先祖は、2億年から3億5千万年前の石炭紀 に、恐竜よりも前から生息しています。ゴキブリが非常に多かったので、この時代は しばしばゴキブリ時代と呼ばれています。 この時代は、地球上の気候は温暖で、湿度があったのでゴキブリが生息するのに理想的な条件であった と思われます。 現在は気候条件は涼しく、湿度も低くなりましたが、今日のゴキブリは遠い過去の化石に保存されて いるものと驚くほど類似しています。

ライフサイクル、挙動、隠れ処

ゴキブリは非常に耐久力があり、食べ物や水がなくても長期間に亘って生存できます。 ゴキブリは、しばしば狭い隙間や窪みで生活するので見逃されることがあります。 ゴキブリは生存にたけているので、駆除法を講じる前にライフサイクル、挙動、隠れ処を基本的に 理解することが必須となります。 どれくらい長くゴキブリが生存するか、産む卵の数などに関する情報は、ライフサイクルと呼ばれて います。 隠れ処あるいはライフサイクルにおける行動は挙動と考えられます。 ゴキブリが生活し、食餌をする場所は隠れ処と呼ばれています。 そこで各々のゴキブリのライフサイクル、挙動、隠れ処を詳細に記述してみましょう。


チャバネゴキブリ(Blattella germanica)

ライフサイクル: 雌のチャバネゴキブリは、卵が30ー40個入った卵鞘、すなわちカプセルを作ります。 卵鞘を作った後に雌は卵が孵化するまで約3週間卵鞘をつけています。 その後雌は卵鞘を落とす前に隠れ処に入ります。この挙動のため雌や卵への危害が可能な限り 少なくなっています。 未成熟のチャバネゴキブリ(幼虫)は、急速に大きく成長します。 卵鞘から出た幼虫は約60日で6回ないしは7回脱皮します。 最後の脱皮で、翅が十分生長した、性的に成熟した成虫が現れます。

雌は生涯で4個から8個の卵鞘を作ります。つまり、1匹の雌から300匹以上の子が生まれることになります。 約60日後、最初の卵鞘から孵化した幼虫は子を作り出せる成虫となります。 もしこれらの幼虫の半数が雌で、それらの各々が300匹の幼虫を作るとなると次のような 計算ができます。 最初の雌のチャバネゴキブリから1年の終わりには 100,000 匹以上のゴキブリが発生することに なります。

挙動と隠れ処: チャバネゴキブリは、湿度が高く、紙、木、多孔性の材質表面があり、食べ物が容易に入手できる 暗い場所に集合します。 かれらは、そのような表面には糞中にある集合フェロモンがマーキングされているのでこれらの 場所に集まることができます。 フェロモンは、ゴキブリにより生成される化学物質であり、他のゴキブリの挙動に影響を及ぼします。 この集合フェロモンは、未成熟段階において非常に誘引性があります。 その結果チャバネゴキブリは、空気の滞留した、暗い、糞の多い多孔性表面の近くに 集合します。 これらの集合場所の例として、キャビネット、壁、天井空間、冷蔵庫、自動皿洗い機、 オーブン、洗濯機、乾燥機、湯沸かし器の中および回りの隙間や窪みなどがあります。

チャバネゴキブリは、食べ物と水が豊富で、身が守られる隠れ処に生息しています。 最も湿度のある場所は、キッチン、浴室、トイレ、浴槽、シャワー、シンクです。 かれらは特にシンクのトラップ、水が漏れている蛇口、水がたまっている場所、濡れたスポンジ を好みます。 チャバネゴキブリは、強制されなければこれらの好ましい場所を自らで去ることはありません。 もし食べ物、水、隠れ処(要因)があれば、ゴキブリの数は急速に増殖します。 これらの要因が取り除かれると、数は増えずに減ることになります。これらの要因をどのように して取り除くかについては第5章を参照してください。

調査: 湿度の高い場所(通常キッチンや浴室)に注目して、懐中電灯を持ってチャバネゴキブリ(生体あるいは 死骸)、糞(小さい糞、乾燥した糞)、あるいは糞の跡(糞が材質表面に押しつけられていたり、糞で汚れて いないかどうか)、表皮、卵鞘の抜け殻などを調査します。 繁殖を確認し、ゴキブリ問題の程度を推定する役に立てるためにもトラップを使わなければなりません。 トラップについては、第4章のトラップの設置を参照して ください。


チャオビゴキブリ (Supella longipalpa)

ライフサイクル: 13ー18個の卵を含んでいる卵鞘は、家具、キャビネット、額縁の裏、壁や天井などに 産みつけられます。 卵鞘は約50日で孵化します。 (約6ヶ月の)寿命の中で雌のチャオビゴキブリは最大限14個までの卵鞘を産み落とします。 性的に成熟した翅を持つ成虫になるまでに幼虫は5ー6ヶ月の間に6ー8回脱皮します。 雄のチャオビゴキブリは、追われると飛ぶこともできます。

1匹の雌のチャオビゴキブリは約250匹の子を産む能力があります。 しかしながら、幼虫が成虫になるまで時間がかかることから、チャバネゴキブリほど 急速に大きな集団になることはありません。 また、卵鞘は産み出されるとすぐに環境中の対象物に産み付けられるので、孵化率を下げることになる 乾燥、かびによる汚染、斃死などの要因に敏感です。 このためチャバネゴキブリより産子能力が低くなります。

挙動と隠れ処: チャオビゴキブリは温度の高い場所で最も多くの集団をつくります。 チャバネゴキブリよりは少ない水要求量であるので、かれらはチャバネゴキブリに不適な 乾燥した場所でもしばしば生存することができます。 かれらは、視線から上にあるキャビネットの中、クローゼット棚の回り、絵画の裏、冷蔵庫のモーター、 電子時計、タイマー、テレビなどの近くの温かい場所にしばしば生息します。 その他の好まれる場所として、キッチンの椅子やテーブルのかすがいのまわり、壁にかかっている物の回り、 シャワールームのしきりがあります。 卵の鞘は、壁やきめのある天井のような粗い表面上に産みつけられますが、キッチンのシンク、 机、テーブル、その他の家具の回りにも産みつけられます。

調査: 調査はチャバネゴキブリと同じようなものですが、糞による汚れ、表皮片、生体あるいは死骸、 高くて乾燥した場所に産みつけられた卵鞘に注目します。 チャオビゴキブリは、長い成長時間、孵化時間を持っているので、観察やトラップにより駆除効果を 監視することが特に重要となります。


トウヨウゴキブリ (Blatta orientalis)

ライフサイクル: 1匹の雌のトウヨウゴキブリは、チャバネゴキブリあるいはチャオビゴキブリ の雌に比べて産子能力が劣っています。雌のトウヨウゴキブリは、1シーズンに最大限8個までの 卵鞘を産みますが、ネブラスカ州のように冬が厳しい場所では卵鞘の数は少なくなります(1年で 1個程度)。完全に形成された卵鞘には16個の卵があるので、数は年に16個程度となります。

卵鞘は、作られてから約2日以内に食物が豊富で、隠れられる場所に置かれます。 約2ヶ月で幼虫が発生し、春から夏の半ばにかけて最も活動します。 早春にはトウヨウゴキブリの成虫のみが見られます。晩春には幼虫が多くなり、成虫は 死に始めます。8月にはトウヨウゴキブリの成虫は新しい世代に替り、そのほとんどは 再び成虫が占めることになります。


1年に亘るトウヨウゴキブリの幼虫と成虫の相対数 (C. Ogg 1995).

チャモンゴキブリと同じように、卵鞘は乾燥、かびによる汚染、食料が底をついた 場合の共食いなどにより影響を受けます。 卵鞘は、しばしば他の昆虫の食べ物となり、もし鳥が侵入できる場所であれば鳥により食べられる ことがあります。

挙動と隠れ処: トウヨウゴキブリは、ネブラスカ州で見られるその他のゴキブリに比べて数が 非常に少ない種類です。 かれらは他のゴキブリに比べて水の欠乏に対してより敏感であり、冷たく、湿った場所を 好みます。 暗くて湿った地下室、潜り込める空間、土と土台の間の部分、側道の下、下水管、床の ドレイン、その他の温度の低い、湿気のある場所にいるトウヨウゴキブリを見つけてください。 戸外ではかれらはごみ箱の近く、あるいはその下に集まります。

調査:湿度が高く、温度の低い場所に集中して調査してみてください。 地下室では、ゴキブリの繁殖場所はくもの巣を調べることで確認することができます。 地下室のない家では、潜り込むことのできる空間を調べてください。 キッチンや浴室では、配管回りを調べてください。 糞による汚れ、ゴキブリの生体あるいは死骸、卵鞘を調べてください。 数が少ない場所を確認するにはトラップが通常必要です。 トウヨウゴキブリの繁殖が少ない住居でも、住人はかれらが最も活動する 春の1ー2ヶ月のみゴキブリを観察することがあります。 注意! 春に観察されるトウヨウゴキブリの数が少ない、あるいは制御されていると思われても、 真夏までには増えます。


ワモンゴキブリ (Periplaneta americana)

ライフサイクル:ワモンゴキブリの卵鞘は、約14個の卵を持っています。 卵鞘が形成されて数週間後に亀裂や割目の間にしばしば隠されます。 1ー2ヶ月で幼虫が産まれ、6ー12ヶ月の間に13回脱皮を行なって成虫となります。 雌は約1週間で1個の卵鞘を産むことができます。したがって、6月、7月、8月の暖かい 月に12ー24個の卵鞘が作りだされます。成虫は通常1年以上生存することができ、寿命は約 2年間です。

ワモンゴキブリは産子能力が非常に高いものの、厳しい冬のためネブラスカ州では ワモンゴキブリの成長は遅くなります。その結果、ネブラスカ州では南部の州に比べて産子 能力は低くなります。

挙動と隠れ処:ネブラスカ州ではワモンゴキブリは、レストラン、八百屋、 パン屋、食料が調理されたり、保管される場所で見つけられます。 かれらはボイラー室、加熱蒸気ダクト、地下室の配管回り、温水ボイラー、濡れた床のドレイン などにしばしばみられます。 ワモンゴキブリは、チャバネゴキブリと共生することができます。 これらの大型のゴキブリは、ネブラスカ州では前述した3種と比べて余り一般的ではありません。

調査: ワモンゴキブリの調査は、温かくて、湿度の高い場所に着目します。 かれらの存在の証拠を見つけるにはトウヨウゴキブリと同じような方法をとってください。 ワモンゴキブリは "生まれながらの飲んだくれ"として知られており、かれらは発酵する液体をしばしば強く求めます。 空になったビール瓶の中にワモンゴキブリが入っているのを多くのレストランやバーの 経営者が見ています。かれらを誘引するのにビールに浸したパンを使用することがあります。 ワモンゴキブリの寿命は長いのでトラップを含む継続した調査が必要となります。


ウッドゴキブリ (Parcoblatta spp.)

挙動と隠れ処:ウッドゴキブリは、腐った木材、木の幹、穴のある木、止まった雨樋、 薪の山の中で生息します。 雄は晩春の頃雌を求めて飛行します。雄は光に呼び寄せられ、時々偶発的に住居に入り込むことが ありますが、すぐに死んでしまいます。 最もよい防御方法は、壁、ドアー、窓回りをしっかりふさぐことです。化学物質による駆除は必要 ありません。


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Pesticide Education Resources @ University of Nebraska-Lincoln