殺虫剤とは?いままでゴキブリ対策として水、食料、隠れ処をなくすることについて検討してきました。 このような一次的駆除法によってゴキブリの環境保持能力を下げることができます。 これらの駆除対策は、殺虫剤の使用開始前に講じなければなりません。 住居内の環境 (キッチン、浴室、地下室など) は、ゴキブリを繁殖させる能力があるので、殺虫剤のみに 頼っても一時的な解決にしかなりません。 ゴキブリの数が元に戻らないようにするためには、殺虫剤を反復使用することが必要です。
一次的駆除法と組み合わせると、殺虫剤はゴキブリの数を減らす上で非常に有効的なものとなります。 殺虫剤の適切な使用は、その選択と方法によります。
詳細については次の3章で検討します。各々の章の内容を参照することにより殺虫剤 を安全に、効率的に使用することができるようになります。
化学物質とは何でしょうか? われわれの回りにあるすべてのもの、例えば地球、空気、われわれの体 も化学物質から構成されています。 化学物質の最も小さな単位は原子と呼ばれています。 原子が純粋なままで存在していれば、それは元素と呼ばれます。 酸素、水素、窒素、炭素は最も一般的な元素です。 2つ以上の元素が化学的に結合していれば、それらは化合物と呼ばれます。 一般的な化合物である水は、水素が2つ、酸素が1つから構成されています (H20)。

動物や植物は化学物質から構成されており、そのほとんどは非常に複雑な化学物質です。 生体の化学は、それらが主に炭素、水素、酸素という有機元素から構成されているので有機化学として知られています。 ある人にとっては、有機の世界は何か天然のもの、あるいは合成肥料や殺虫剤を 使わないで成育させたものと想定することがあります。 ここでは、有機とは有機元素を含んでいる化合物であると規定します。
殺虫剤は、害を及ぼすものを殺すことのできる化学品です。もし対象が雑草であれば、それは 除草剤であり、もしねずみを殺すものであればそれは殺そ剤と呼ばれます。殺菌剤は細菌を殺し、 殺虫剤は昆虫を殺すものです。 ほとんどの殺虫剤は有機化合物であり、化学者により合成され、化学会社が製造しています。 ただし、植物、鉱物、あるいは非有機性元素から誘導される殺虫剤もわずかとはいえあります。
米国環境保護庁 (EPA) は、多くの家庭で使用される殺虫剤製品は農薬であると規定しています (その例)。
有効成分は、農薬製品において汚れ役を発揮する特殊な化学物質です。 有効成分は、毒性の少ない不活性な物質と混合されて使用され、これはラベルに表示されます。 有効成分と不活性成分を合わせて殺虫剤処方と呼ばれています。 ある種の処方、特に家庭用として室内で使用されるものはそのまま使用できます。 その他は使用に当り正しい濃度になるように水で薄めなければなりません。 ラベルの表示に殺虫剤の使用法が記載されています。
家庭用のゴキブリ駆除用として多くの製品があります。 ここではゴキブリ駆除で用いられる主な処方について述べ、異なる処方の特長と欠点を あげてみます。
若干の有効成分は、しばしば1つ以上の方法で処方されます。 例えば、よく使用されるクロロピりホスは、乳化剤、水和剤、エアゾール、ベイト剤 および粉剤として処方されています。
乳剤 (EC)
乳剤に水を加えると殺虫剤、溶剤、キャリアーが安定的に分散した混合物となります。 不活性成分は、しばしば高純度の油や溶剤です。
家庭用殺虫剤で処方される乳剤は、通常有効成分の濃度が低くなっています。 すぐに使用できる乳剤は、販売前に製造業者ですでに薄められており、薄めることなしに使用できます。使用者が高濃度の液体を混合する必要がないので、安全性が 高まります。
乳剤の利点は、隙間や亀裂に使用できることであり、若干の残留効果もあります。 一般的に乳剤は、キッチンや浴室の非多孔性表面にいるゴキブリに対して非常に 有効です。 ただし、乳剤に処方されている石油系溶剤は、カーペット、繊維地、壁紙などを汚すことがあります。 使用前に注意深く殺虫剤の適用を検討する必要があります。
乳剤は、ゴキブリ駆除で重要な処方であり、いくらかのものはディスカウントストアー、 ドラッグストアー、食料品店、金物店などで購入できます。 業務用の乳剤製品は、一般向けの害虫駆除用品販売をうたっている地元の専門駆除業者から購入できます。 しかし、専門駆除業者向けに販売されている乳剤処方は濃度が高く、噴霧器中で水で薄める必要があります。
マイクロカプセル剤 (ME あるいは MEC)
マイクロカプセルでは、殺虫剤は非常に小さな球の中に含有されています。 このマイクロカプセルにより殺虫剤は球の膜を通して非常にゆっくりと放出され、有効性が 持続します。
低臭処方剤 (LO)
嫌がられる化学臭を低減するように処方された殺虫剤もあります。 これらは客が不快に思わないようスーパーマーケット、レストラン、公共施設のような非常に微妙な環境に使用できます。 この例として Dursban LO® という製品があり、これらはクロルピリホスを含有する処方の中で臭いの少ない製品となって います。
エアゾール剤 (A)
エアゾール中の有効成分は、ガスで加圧されて揮発性の石油系溶剤に溶解されています。 一般的なOTC用エアゾールは、有効成分含有量が低くなっています。 これらのエアゾールは、液体が害虫と直接に接触すると最も効果が発揮されますが、隙間や 亀裂に隠れているゴキブリに対しては余り効果がありません。 専門業者向けに有効成分含有量の高い隙間や亀裂処理用の処方があり、これは隙間や亀裂に対する処理で 使用すると非常に効果があります。
OTC用エアゾールの主な特長は、使用が簡単ですぐに入手できることです。 欠点としては、使用中に容器をまっすぐ立てなければならないことであり、 残留性が非常に乏しく、含まれている殺虫剤の量からは比較的値段が高く、溶剤の 蒸気が空気で運ばれ、使用者に害を及ぼすことがあります。
有効成分含有量が高いエアゾール製品は、専門業者向けの製品を一般に販売する業者から 入手できます。
煙霧剤
煙霧剤は、1回の使用で全部の内容物を出すエアゾールです。 煙霧処理を行っている場合、人やペットは部屋の外に出て、2−3時間戻ることができません。 再び部屋に入れるまでの時間についてはラベル表示をよく読み、煙霧剤を使用する前に注意に 従ってください。 エアゾールと煙霧剤は非常に細かい霧滴を作り出し、家具、床、カウンタの上に落ちます。 これらの霧滴を人やペットは容易に吸入します。 煙霧はくん蒸とは全く異なります。 くん蒸剤は致死的な殺虫剤ガスを使用しているので、専門業者のみが使用できます。
煙霧剤は、使用が簡単で入手も容易です。残念ながら煙霧剤は見えているゴキブリのみを 殺すものです。ほとんどのゴキブリは、隙間や亀裂に隠れており、煙霧剤が届かないので殺すことは できません。ゴキブリは殺虫剤を避けるため壁や天井の中にさらに深く入り込みます。
粉剤 (D)
粉剤は、有効成分のほかにタルク、クレー、ナッツの殻、火山灰のような粉末状の乾燥した 不活性物質を含んでいます。 不活性物質のため、保管や取扱いが良好となるような粉剤となります。 家庭内では居住者が粉剤をかきまわしたり、動かしたり、吸入しないような場所でのみ使用しなければ なりません。 粉剤を使用するのに適切な場所は、壁の窪み、ベースボードの裏、キッチンカウンターの下の 囲まれた空間、天井板の上、使用していない屋根裏部屋などです。 粉剤は、乾燥状態で使用し、乾燥した場所に保管しなければなりません。
ホウ酸:ホウ酸は硼砂から作られ、通常固結防止剤が入っています。 ゴキブリは粉の中を歩いた後に身づくろいをするときなどにホウ酸を食べます。 ホウ酸は遅効性の食毒です。
ホウ酸は人や哺乳類にも比較的安全ですが、誤って食べると有害であり、食品、子供、 ペットから離して保管しなければなりません。 使用にあたってホウ酸の粉を吸い込まないように気をつけなければなりません。 他の粉剤と同じように、動き回らないような場所で使用しなければなりません。 化学的に活性な成分ではないので、濡れたり湿ったりしなければ無期限に効果があります。 湿度が高いと効果が下がるので、地下室のような湿度の高い場所には有効ではありません。 ラベルには好きなだけ使用と書かれているかもしれませんが、非常に薄い層にして散布するだけで十分です。 湿度が高い時期にはホウ酸を再度散布するとよいでしょう。 ホウ酸は、通常粉状で供給されますが、エアゾール、液状(乾燥して膜が形成される)、 ペースト状のものも入手できます。
製品として、PermaDust® (エアゾール容器に入ったホウ酸末), Roach Prufe®, PIC® Boric acid and Roach Buster® などがあります。 その他の製品については付録Bを参照してください。
水和剤 (WP あるいは W)
これらは、乾燥した、粒径の細かい、粉末処方です。 ダストのように見えるものの、成分に湿潤剤が加えられており、水と混合しやすいようになっています。 水和剤は、水を加えると溶液というより濁った液になります。 殺虫剤成分がスプレータンクの底に沈まないように十分に攪拌することが必要です。 水和剤を木のような多孔性表面に散布した場合、水は木の中に浸透しますが、粉は木の表面に 留まります。このため表面には最大限の残留物が残り、したがって残留効果はありますが、 粉がふいて見えるので見栄えはよくありません。このため表面に殺虫剤成分が残留するのが問題にならない場所以外、 ゴキブリ駆除で水和剤の使用が制限される場合があります。
ベイト剤は、食毒成分が混合された可食性、誘引性の物質です。 ベイト剤は、使用が簡単で、人に安全なようにベイトステーションに入れて家庭用としてOTCで販売 されています。 ベイトステーションは、ゴキブリがいる場所の近く、食物に落下しないような場所に設置します。 ベイト剤のみを使用する欠点として、駆除効果が遅いということがあります。 また、ある種の製品はゴキブリの大量繁殖を抑えることができないという欠点があります。 マックスフォース(ヒドラメチルノン)に関する最近の報告で、この製品を使用すると大量の数の ゴキブリを迅速に駆除できることが示されました。 ベイト剤は他の駆除法と理想的に使用でき、衛生管理がすばらしい場合には最もよい効果があります。 ゴキブリ駆除のベイト剤には以下のような多くの種類があります。
塩素化炭化水素類: 使用禁止
塩素化炭化水素類として DDT、アルドリン、エンドリン、クロルデンがありました。 殺虫剤が環境中に長期に亘って存在し、動物の脂肪組織に残留するので1970年から80年代において米国環境保護庁は米国においてのほとんどの塩素化 炭化水素類の販売および使用を禁止しました。 ゴキブリを含む多くの昆虫はこれらの殺虫剤に対して抵抗性を示しました。 現在ではこれらの殺虫剤のいずれもゴキブリ駆除に使用できません。
有機リン (OP): 古いスタンダード
有機リンは神経ガスの開発をする中で第二次世界大戦中ドイツで発見されました。 これらは一般に塩素化炭化水素よりも脊椎動物に対して毒性が高いものですが、 環境中に余り長期に亘って残りません。 ゴキブリで最もよく使用されている有機リンは、クロルピリホスとダイアジノンです。
カルバメート製剤: 初期の代替品
1951年にカルバメート系殺虫剤が世界市場に導入されました。 住居用のゴキブリ駆除用で承認を受けているカルバメート製剤が2つあります。 プロポクスル (バイゴン®, 図8)とベンチオカーブ (Ficam®)です。 プロポクスルとベンチオカーブは、塩素化炭化水素類や有機リンに抵抗性のあるゴキブリ に対して効果的に使用されています。 しかしながら、ある種のゴキブリはこれらのカルバメート製剤に対しても抵抗性を有しています。

植物系: 天然のもの
植物から抽出される植物性物質は天然の殺虫剤です。 加工され、濃縮されるとこれらの植物系殺虫剤は合成殺虫剤と同じようなものになります。 ある人たちは、天然の植物系殺虫剤は合成品よりも安全であると信じています。 必ずしもこの通りではありません。 たばこの葉から誘導される硫酸ニコチンは、哺乳類に対して合成殺虫剤よりも毒性が高くなっています。
ゴキブリ駆除に使用される植物系の殺虫剤はピレスリンです。 ピレスリンは、哺乳類に対して毒性は低いのですが、対象昆虫に対しては麻痺を起こさせ、迅速なノックダウン効果 があります。 しかし、ピレスリンの効果を高めるため共力剤を添加しなければこのノックダウン効果は一過的な ものとなります。
ピレスリンの効果を高めるため化学者は実験室で類似の、さらに安定な化合物を合成しました。 これらの実験室で合成された殺虫剤は、合成ピレスロイドと呼ばれています。
合成ピレスロイド:ニューエイジの殺虫剤
同定され、合成されているピレスロイドは多くあります。 例えば、フェンバレート、ペルメトリン、テトラメトリン、サイパメトリン、テフルトリン などがあります(注:名前がトリンで終わっているものです)。 化学者はこれらの化合物を天然ピレスリンよりも安定で、長期に亘って有効となるように 変えました。 効果をさらに高めるため通常ピぺロニルブトキサイドのような共力剤が合成ピレスロイドに加えられます。 合成ピレスロイドを使用する利点の1つに、ゴキブリがこの殺虫剤に遭遇するとゴキブリは興奮し、 活動的になります。 このため合成ピレスロイドを使用した後は夜間しか見かけることのなかったゴキブリを昼間見かける ようになります。 このようにゴキブリの挙動が変ることで殺虫剤の効果を見ることができます。
合成ピレスロイドは、天然ピレスリンのように飛行性昆虫に対してノックダウン効果が 迅速であり、哺乳類に対して毒性も低くなっています。 ピレスロイドは、魚に対して非常に毒性が高いので、少なくとも水槽に覆いをかけ、フィルターを 外しておく注意が必要です。 合成ピレスロイドは、家庭用エアゾール製品の主な有効成分です(例:Raid®, Black Flag® など)。 これらは例えば水和剤や乳化剤としても使用されます。
合成ピレスロイドに曝露することにより呼吸器系疾患のある人には喘息が起きることがあります。 このため敏感な場所での使用が制限されます。
殺虫剤は、特別な方法で害虫を駆除します。適切な方法で使用すれば殺虫剤の有効性は 向上します。情報はラベルに表示されています。
残留性殺虫剤は、使用後少なくとも1週間、数週間、あるいは数年に亘って 害虫を殺すに十分な量が残留するものです。 これらの残留性殺虫剤は、昆虫が接触する表面に殺虫剤成分が残留することで効果を発揮します。 逆を言えれば非残留性殺虫剤は、使用後急速に分解します。 残留性殺虫剤は、家庭内のゴキブリのように害虫が連続して問題となるような場合に 有効となります。
接触毒の殺虫剤は、接触により害虫を駆除します。接触毒殺虫剤は、 害虫に直接的に使用され、害虫は殺虫剤と接触することにより死に至ります。 接触毒殺虫剤を噴霧しても表面にはほとんど毒性の残留はありません。 ほとんどのエアゾールと煙霧剤は接触毒殺虫剤です。
食毒殺虫剤は、昆虫が食べる殺虫剤であり、毒物が胃の中に入り体に吸収されます。 多くのベイトは食毒剤です。

| Pesticide Education Resources @ University of Nebraska-Lincoln | |